企画提案書<ソーシャルメディアを活用した地域情報発信サービス>

久しぶりのエントリーです。
以前ステップアップ研修2「図書館のウェブ活用」の課題として公開した図書館サービスの企画提案書は、はなはだ不十分なものでした。その後、様々な人からご意見をいただき、再検討を重ねて、企画提案書を改訂しました。ご覧いただき、ご意見をいただきたいと思います。

ソーシャルメディアを活用した地域情報発信サービス

1 提案
ソーシャルメディアを活用した地域情報発信サービスの実施を提案する。ここでいうソーシャルメディアとは、インターネットを使用した双方向性のメディアのことである。ソーシャルメディアであるブログ・ツイッターを利用して、利用者の役に立つ地域情報を発信・蓄積することがこのサービスの目標である。

2 現状分析
・ インターネットの普及により、情報環境は大きく変化している。何かを調べるときに、まずインターネットで検索することが普通の行動となっている。
・ 同時に、図書館の存在感が相対的に低下している。
荒川区での図書館利用登録者数の過去6年の変化を見ると、登録率が減少している。
・ このままの傾向が続けば、地域の全ての人に必要な情報を届けるという使命を果たせない。現在の状況を客観的に受け止めて、対策を考える必要がある。
公共図書館には、現在の環境に適応したサービスが求められている。

3 サービス対象
・ 今回提案するサービスの主な対象者は、インターネットを利用しているが、図書館はあまり利用しない潜在的な図書館利用者である。
総務省の調査※によると、13歳から49歳のインターネット利用率は95%以上である。
・ 30代以下の潜在的利用者へのサービス展開には、インターネットの活用が有効と考えられる。
・ インターネット親和性が高いことと、子育て・教育・文化・健康・仕事などに関する地域情報の二ーズがあることから、20代から40代の潜在的利用者を主な対象者として絞り込む。
※【参考資料】総務省「平成21年『通信利用動向調査』の結果」
http://www.soumu.go.jp/main_content/000064217.pdf


4 ソーシャルメディアの活用
・ 現在区立図書館では、Web‐OPACによる資料予約サービスを行っているが、さらに一歩進んだ情報発信サービスとして、ソーシャルメディアを活用したサービスを構想した。
・ ウェブサイト・メールマガジンとは異なるソーシャルメディアの特徴として、速報性・波及力・双方向・親密性の4点が挙げられる。波及力を使えれば、図書館に興味のなかった人にも情報を届けることができる。また双方向のコミュニケーションを取りやすいメディアなので、うまくやり取りできれば、図書館に親しみを感じてもらえるという利点がある。

5 先行事例
・ すでにソーシャルメディアを活用している図書館は国内外に多数存在する。
・ 内容は、図書館からのお知らせ、新着資料の紹介や、利用者とのコミュニケーションツールとしての活用、図書館マーケティング,図書館員の交流・研修情報の共有というように、さまざまな使われ方をしているのが現状である。
・ 例えば、アメリカ議会図書館は,単に自館の活動やイベントを紹介するだけでなく,投稿に対するコメントのやり取りなどを通じ,利用者とのコミュニケーションツールとしてもツイッターを利用している。

6 サービス概要
6.1 目的

・ 日々生じる地域に関する情報は、ほとんどが印刷資料としては残らない。網羅的な情報収集の一環として、チラシなどを集めることと同様に、ウェブ上の地域情報を収集・蓄積する。
・ 収集した情報は印刷資料情報と組み合わせて、地域情報データベースとして発信する。図書館ならではの情報発信サービスを行い、地域の情報拠点を目指す。

6.2 見込まれる効果
・ 非来館者にも情報提供することで、図書館の存在をPRできる。
・ 地域情報を広く伝達することで、地域活性化につなげる。
・ 将来、図書館事業として地域資料のデジタル化・データベース化をする際に、このサービスの経験を活かすことができる。

6.3 具体的な方法
・ 区報などの広報誌や、図書館に集まるチラシ・パンフレット類、荒川区ホ−ムページ、荒川ゆうネット(地域のポータルサイト)等を利用する。
・ 上記等の情報源から「子育て・教育・文化・健康・仕事」に関連する地域情報を見つけて、ツイッターで紹介する。その際ハッシュタグ「#ara_archive」を使い、あとから検索可能にする。またツイッター利用者から地域情報を発信してもらうよう呼びかける。※【図1】参照
ツイッターで流した情報をブログでまとめる。印刷資料情報も加えて記事を書く。※【図2】参照
・ 「子育て・教育・文化・健康・仕事」の分類別に情報をまとめて、調べやすくする。

【図1】(ツイッターユーザー名:「ara_archive」

【図2】(ブログ名:「ARIA Arakawa Information Archive」

7 予測される問題 
・ サービス導入にあたって、利用者対応や担当者にかかわる問題が予測できる。

7.1 利用者対応
・ 一度発信した情報は、完全には削除できないことを考慮する。不適切な書き込みをしないなど十分な注意が求められる。コメントへの返答に関しても、不特定多数の利用者が相手なのでトラブルを防ぐための的確な対応が必要である。

7.2 担当者
・ 職員が全てインターネットに詳しいわけではない。システム障害時や、問い合わせ時に詳しい職員がいないと、トラブルにつながる可能性がある。
・ 担当者が一人だと、不測の事態に対応できない。また、情報収集も1人では限界がある。異動・退職に伴うサービス停止のおそれもある。

8 問題への対策
・ 事前にソーシャルメディアポリシーの策定と、運営体制の確立をすることが必要である。

8.1  ソーシャルメディアポリシーの策定
ソーシャルメディアを利用する際に自治体が守るべき方針をまとめた、「ソーシャルメディアポリシー」を事前に策定する。

8.1.1 コミュニケーションガイドライン
・ 対象は、利用者および外部関係者。彼らに、図書館がどのような意図でソーシャルメディアを活用しているのか、考えを表明することが主たる目的である。様々な立場の人に参加を呼びかけ、参加する際の注意点を提示する。図書館の考え、運用方針、問い合わせ方法、また保証できる情報の限界も明示する。原則的に公開する。

8.1.2 職員活用ガイドライン
・ 業務として参加していない人にも、ソーシャルメディアを理解してもらうことが目的である。ソーシャルメディアを利用する場合の心構えと注意を喚起する。図書館の考え、ソーシャルメディアの解説、参加時の心構え、相談先などを提示する。内部関係者に公開することで、担当者以外からの理解と協力を促進する。

8.1.3 運用ガイドライン
・ 主に担当者向けに、業務としてソーシャルメディアに参加する人達向けにガイドラインを用意する。目的は、「リスクを最小化しつつ、ソーシャルメディアを利用するための行動基準」をメンバーに浸透させること。参加時の心構えと、運用ルールが主な内容である。 基本的に業務マニュアルに近い性質を持つので、外部に公開はしない。


8.2 運営体制の確立

8.2.1 職員研修
ソーシャルメディアの利用法を始めとして、担当職員の情報リテラシーの向上を図る。

8.2.2 担当チーム
・ 各地域館から1名、中央館から2名、計6名を担当者とする。
・ 見込み作業時間は、30分/日を情報収集・ツイッターへの書き込みに充てる。30分/日をブログ更新に充てる。週6日×60分=6時間、月24時間分の作業時間を6名でローテーションする。
・ 情報収集は全員で担当する。まとめと書き込みを3名ずつ1週ごとに交代。勤務日を調整して、担当者不在とならないようにする。隔週で担当が回ってくる。
・ 基本的に業務時間内の勤務だが、場合により超過勤務手当ての支給も検討する。
・ トラブルの事例や解決策の情報をチーム内で共有する。運用ガイドラインの策定と、その後の運用を担当する。

9 おわりに 〜これからの図書館サービス〜
ソーシャルメディアをはじめとする新しい技術を、図書館サービスに取り入れることができれば、来館者だけでなく直接図書館に来ない人も含んだ図書館コミュニティを創り出すことができる。「全ての人に情報を届ける」という図書館の使命実現のためにも、積極的にサービスを推進していきたい。

ソーシャルメディアを活用した地域情報の収集・発信の可能性

ソーシャルメディアを活用した図書館サービスを模索しています。不十分ながら実践してみた過程から、今後出来ることを考察してみました。

  • 当初の目的

ソーシャルメディアを活用して、地域住民からの情報収集を行う。
それらの継続による地域情報データベースの設立および情報発信を目的とする。

  • 方法
    • ブログ・Twitterを使い、テーマ別・ジャンル別に地域資料・地域情報の紹介。最近の情報も含める
    • 広く情報収集(主にTwitterを使う)
    • ブログにレファレンス事例をアレンジして載せる(失敗例も)
  • 運用上の問題点・課題
    • 情報収集の難しさ:住民が自発的に情報を伝える動機がない
    • 定期的な情報管理・発信の難しさ:個人で行うのは負担が大きい。業務の一環として継続できる体制が必要
    • ターゲットに届ける難しさ:非来館者をどうやって探せばよいのか?
  • 新たな目標
    • 広報・PRの手段として位置づける:普段図書館に来ない人に対してのPR手段。
    • 地域情報のパスファインダー作りにつなげる:図書館へ来ることを前提としない。地域について知りたいときに役立つ情報源を作る。
  • 改善案
    • ツイッターで毎日速報を出す。ブログは週2〜3回ほど更新。
    • 旬の情報プラス郷土歴史情報、地域資料の紹介など。